#STAYHOME 何してる?

どうやらSTAY HOMEは、多くの人にとってたいへん辛いことらしい。

その気持ちがまったくもってわからない私は、過去に療養を余儀なくされて9ヶ月間働いていなかった期間があるのだけど、ほとんど自宅から1km圏内を出ずに9ヶ月を過ごした実績がある。さすがに片道徒歩3分のコンビニや徒歩6分の小型スーパー、病院まで行くことはあったけど、ほとんどの日々を自宅の中だけで過ごした。人によっては辛かっただろうに、という感想を抱かれるかもしれないけど、その実、その期間は私にとってまさに天国だった。ドクターストップがかかる程度には体が思うように動かなかったが、「仕事しなくていい」「家にずっといていい」「好きに生活してていい」という夢の三種の神器を手にし、最初で最後と思われた人生の夏休みを、心ゆくまで堪能した。
そのうち全快するとともに貯金が尽きて税金が払えなくなる兆しが見え始め、焦りとともにまた働きに出ることに決めて、9ヶ月間の人生の夏休みは終了した。

まさか人生二度目の夏休みがこんなに早くやって来るとは。
それが私にも訪れたSTAY HOMEの第一印象である。

「STAY HOMEがつらいという気持ちがわからない側」の立場から聞こえてくる声を分析すると、主たるストレスの原因は多様なコミュニケーションが封じられてしまったことや、閉塞した空間で同じ人間と毎日顔を突き合わせなければならないこと、のように思う。あとは暇すぎてやることがないという悩みも散見される。だから枕をミニドレスに見立てて着てみたり、ミュージシャンの歌に伴奏をつけてみたりして、SNSのコミュニティ上でSTAY HOMEをなんとか楽しもうとムーブメントが起きたりするのだろう。

実際に友達も長引く外出自粛のストレスで体調を崩してしまったし、会社のLINEグループには二週間も経たずに「家飽きましたね。会社でミーティングしませんか」というメッセージが入った。これは「まったくわからない側」としては予想外すぎて衝撃的だった。(私は移動経路が電車しかないことを理由に、丁重にお断りした。)
友達に身体症状が現れているように、「たいへんつらい側」の人からすれば、この事態はひどいストレスだということがうかがわれる。私には子供がいないので平穏だけど、エネルギーを持て余した子供がいたり、さらにワンオペだったりしたら、STAY HOMEが辛くなるのは想像に易い。外出自粛中なのにわざわざ会社に行ってミーティングするなんて、とお怒りの方もいらっしゃるだろうが、「たいへんつらい側」からすれば、精神を安定的に保つためには外出&コミュニケーションがけっこう不可欠なことなのだろうと思うと、責めるに責められないのではないだろうか。

ただそれとはまったく逆で、人と会うたびに結構なストレスを感じる人間もいる。ここに。
人と会わなくていい。家から出なくていい。朝起きなくていい。満員電車に乗らなくていい。
不謹慎ながら、もはやご褒美以外の何物でもない。

 

最初の1週間は、STAY HOMEできる喜びで体がはちきれそうだった。
どうせまとまった時間なんて取れないのだから、と、普段の生活の中で浮かんでは霧散していた「時間ができたらやりたかったこと」。それが今でしょと言わんばかりに心臓あたりからとめどなく湧き出てきて、皮膚の内側で膨れ上がり、やっとの思いで収めている風船のようだった。ともすればぱんぱんになった体が弾けて、やりたいことがその辺に散らばっちゃうんじゃないかと思うくらい、喜びに溢れて狂喜した。インドア派だからと言って決して無気力なわけではない。むしろインドアでやりたいことが多すぎるから、毎日ドアをアウトするのが億劫なのだ。

全部いっぺんにやりたくなるけど、まずはその気持ちを無理くり抑えて一呼吸置き、どうどうどうと気持ちをなだめながら、できることから着手しようねと説き伏せる。まずはすべての基礎となる家の掃除・片付けから始めた。コンロやレンジフードのような大物の掃除、オキシ漬けなど、よーしやるぞ!と気合を入れないとできないことも、前触れもなくいきなり始められちゃう。

掃除を始めると収納が足りないという壁にぶつかって、家具・インテリアを見直したくなる。かねてから探していたヴィンテージ家具を一日中探せる。友達とああでもないこうでもないとLINEしながらネットショッピング。付随して最近思いついた新たな趣味、ヴィンテージフラワーベースの収集もスタートを切って、テンション高めにロサンゼルスから個人輸入した。ペットとの蜜月も楽しんでいる。

通勤していた時は土日しかできなかった自然光での撮影もほぼ毎日好きな時にできて、SNSや副業にも精が出た。社会人になってからは時間が取れず、なかなか描けなくなっていたモレスキンの絵日記を気まぐれに書いたりする。
活動に疲れたらプライムビデオで見たかった映画や番組を一気見もできるし、漫画を読んで時間を溶かすのもいい。積ん読がなくなっているので本も何冊か買ったけど、アドレナリンが出すぎて本は読んでいられない。

ずっと手をつけていなかった棚のDIYを終え、滅多に掃除しないベランダまで片付けて、観葉植物をゆっくり観察して水やり頻度を上げる。本当は植え替えもしたいのだけど、自分の中の優先順位が低いので後回しにしている。ブログもやりたかったことのうちのひとつだ。

 

私のSTAY HOMEが始まって1ヶ月。まだまだやりたいことの半分もできていない。まあ多分、何ヶ月あったって足りないんだけど。
情勢を見れば外出自粛要請の延長は火を見るより明らかだったけど、もしかして終わってしまうのではと気が気ではなかった。コロナ禍は収束して欲しいけど、STAY HOMEは続けたい。こんなこと書いていいのかわからないけど、矛盾した本音を抱えている。

インドアアクティビティに慣れない友達から「師匠」と呼ばれ始めたので、私の有り余るやりたいことが、もしかしたら誰かの一助になるのかもしれない。
この不安で先行きの見えない情勢の中で能天気すぎるけど、ちょっとご紹介できればと思う。

 

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