初めてアート購入を検討した話|前編

逡巡

1、2年前からアートを購入することが頭の片隅にあった。
趣味の植物収集で買う時と同じように、どうしようもなくほしい作品に出会えたらその時に買おう、というゆるい決心をなんとなく脳裏にちらつかせたまま、特にハントのための活動もせず、出会えないまま時が過ぎていた。
最初はおそらく3〜4万円程度のとても小ぶりのものから入るんだろう、というイメージを漠然と持っていた。

で、その価格帯のものは軒並み売り切れていて。
それでもどうしてもひとつ手に入れたかった。次の展示はまだ決まっておらず、おそらく1年後くらいになりそうだということだった。やっぱり「今」欲しい。1年は待てない。

 

閉店までの30分をフルに使って悩み抜く。
15万円と10万円の、この展示のメインとなる2作品は素晴らしかったけれど、値段を聞いて無意識に思考の俎上から下ろしていた。
初めてアートを購入しようという小童が、しかも今日初めて知った作家の作品の値段としては、レベルが高すぎるように感じて。

最終的に小さくて複雑さが魅力の一点と、大きめでシンプルな一点、このどちらかなら手が届きそうということで、二つを並べて唸っていた。
小さい方が特徴が濃くて好きなのだけど、他と比べてサイズがかなり小さいもので、6万円だった。この値段を払うならもうちょっと大きいのが欲しい、って思ってしまう。
大きい方は5万円。それはそれでとても素敵なのだけど、やっぱり特徴的な要素がもっと入っているものにどうしても惹かれる。

穴があくほどふたつを見比べているうち、なんだか眼球に血が集まってきたような気がしてきた。
今鏡を見たら目が血走っているのじゃないだろうか。なんだか身体があつい。汗をかいている。

結局閉店の時間が迫ってきて焦る気持ちもあり、ふたつの作品の写真を撮らせてもらって一晩悩むことにした。
服屋でそうするのと同じように、ショップカードに品番と値段を控えてもらう。

 

とにかくギャラリーが閉店している間はほかに買い手はつかない。
じっくり考えられる12時間程度の猶予を得たのは有り難かった。
1ヶ月もあった展示期間が残り5日になるまで残っていたのだから、平日のこの期間に突然売れてしまうとも思いにくかったけど、悩みに悩んで決めたひとつが電話した時にはすでになくなっている、という状況は悪夢だ。
なるべく早く決着をつけたい。買う場合はギャラリーが開く時間に電話してしまおう。

 

2に続きます

 

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